竜巻雷之進を覚えていますか
前々回、昭和懐古の話になりました。小さい頃のことが、いろいろ思い出されます。テレビ以前の、子どもたちの娯楽の一つが漫画本でした。買えない時は貸本屋で借りました。「冒険王」、「漫画王」、「おもしろブック」、「少年」などの月刊漫画雑誌があったと記憶しています。親しんだ主人公は、「イガグリくん」、「赤胴鈴之助」、「鉄腕アトム」などでした。「名探偵ビリーパック」なんて、多分もう誰も覚えていないでしょうね。
赤胴鈴之助のライバルが竜巻雷之進です。赤胴鈴之助の必殺技は「真空切り」でしたが、竜巻雷之進は「稲妻切り」の技を持っていました。やや悪人だった雷之進も、鈴之助に敗れてからは善人になり、二人は無二の親友になります。そして間もなく、雷之進を問題にしないほどの新たな強敵が、鈴之助の前にあらわれます。ライバルを倒すと、そのライバルは善人に変わり、もっとすごい新手の強敵が現れるというパターンは、今の「ドラゴンボール」も同じです。鈴之助が悟空で、雷之進がピッコロ大魔王です。勧善懲悪のストーリーや、主人公が必殺技を持つところは、「赤胴鈴之助」も「ドラゴンボール」もほぼ同様ですが、主人公やライバルの性格づけは、今の方がずっと複雑になりました。例えばピッコロは、悟空を倒すための執念を持ち続けているようですが、悟空の息子の悟飯を、息子に甘い悟空に代わって鍛えます。ピッコロは、突き放したような厳しい修行を悟飯に与えますが、自分自身にも気づかないうちに、次第に悟飯に愛情を感じていきます。このへんの性格描写の深みは、昔の漫画には見られませんでした。日本の社会が複雑になるにつれ、漫画の主人公たちの個性やストーリーも複雑になりました。
赤胴鈴之助もイガグリくんも鉄腕アトムも、みんな一様に強くて優しくて、正義感の固まりでした。ただそれだけでしたが、当時はそれだけで十分な時代でした。個性がほとんどなかった彼らのライバルのことなんか、もう誰も覚えていません。竜巻雷之進は、私の場合の例外です。
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