振り子の理論
平成14年4月に中学校で新しい学習指導要領が完全実施されました。この時の指導要領の基本理念は、「新しい学力観」というものでした。そこでは、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考える力や、判断力、問題解決能力といった力が重視されました。それまでの知識・理解を重視した学力に対して、こうした新しい学力を「生きる力」と総称しました。背景には、偏差値教育や過熱する塾通い、詰め込み主義への反省がありました。この「生きる力」を養うために、ゆとりある生活の中での体験活動が重視されました。こうして「完全学校週五日制」が実施され、問題解決学習として「総合学習」がカリキュラムに導入されました。その結果、各教科の授業時数と学習内容は大幅に削減されました。
それからわずか1,2年後には早くも揺り戻しがありました。国際的な学習到達度調査(平成15年)で、日本の子どもの学力が落ちたという報告がその引き金でした。学力低下論です。3,4年後には完全に潮目が変わり、学校二学期制の導入(横浜では平成16年)や長期休業期間の弾力化(夏休み、冬休み等の短縮化)などで、各学校は一転して授業時数の確保に奔走しました。総合学習の見直し、土曜日の補習なども促されました。全国学力テスト(平成19年)も、こうした流れの中でほぼ完全実施されました。各学校は、外部評価を活用した学校評価を実施し、学校版マニフェストで成果の数値化と情報公開が求められました。通学区域の弾力化など、学校選択の自由裁量も拡大されました。規制緩和と自由競争をベースにした、小泉構造改革路線の教育版と言ってもよいでしょう。ゆとり教育への反省を背景にしたこの流れの延長線上には、次の新しい学習指導要領が既に位置しています。(中学校で平成21年度より移行実施中)
自由競争の歪みや弊害は、既に所得格差として実社会に顕在しています。各自治体や各学校が学力競争に走って、今度は地域や学校による学力格差が露呈してきました。大阪府の橋下知事はカッカして、府の教育委員会の尻を蹴飛ばしています。教育委員会は学校現場の尻をたたくでしょう。こうして最後のしわよせは子どもにいくことになります。格差社会の歪みが教育の世界にも及ぶわけです。
これまでの流れをざっとなぞりながら考えてみましたが、さてこの先はどうなるのでしょうか。詰め込み主義や過度の競争心への極端な反省に、再びまた戻るのでしょうか。振り子に振り回される教育現場は更に疲弊し、子どものストレスは高まるばかりです。大切なのはバランスだと私は思います。
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